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キャラバンたちの演奏は少しずつ静まり、大輔のヴォイスが次なる曲を予感させる
その大輔も立ち去ったあと…
周のギターだけになり…
桃の鳴らすチャイムが森閑とした美しさを漂わせていく
……「十字峡」だ!
そこへ青い布を羽織った尺八のくまさんが吹きながら登場
かつて虚無僧が吹いていた二尺四寸もの通常より長い尺八は
ノリで突っ走っていくリズムとはまったく違い
時間を止めてしまったかのような空間を感じさせる
まさに「十字峡」にはぴったりの音色
6年前のアルバムに収めた周のバラードは自然の驚異に対する畏敬の歌だ
この曲を聞くたびに まだokuraとして小さなライブハウスで
力いっぱい歌っていたふたりを思い出してしまう
そして尺八が醸し出す日本の風景にはやはりioraの力作「雷鳥」が聞きたい
ここでフラメンコ・ギターの大熊功が参加
尺八の熊本圭吾とはOSO(オッソ)というユニットの相棒でもある
♪雷鳥のように運命とともに強くなりたい♪
誰もが自分の弱さに怯え 時にあきらめてしまいがちな日常の中で
自らを鼓舞し 自信に満ちて揺るがぬ生き方を模索しようと歌いあげる
♪どんなに風が吹いて困難な足場でも ここで生きてく♪
OSOとioraの4人で組む時は いつも桃がフラメンコの歌〜カンテを歌う
アラブ・パーカッション・伊藤あつ志の手拍子も交え
フラメンコ・ギターが素早いパッセージをかき鳴らすと…
よもやここは一気にスペインの酒場の気分だ
「ボルベール」と「アレグリアス」というスペイン語の歌を
桃はなんとも悩ましく切なく朗々と歌う…
桃のソロを追うように迫るフラメンコ・ギターの響き
しだいに熱くなる周と大熊のツイン・ギター
大輔が戻り 再びヴォイスが雰囲気を変える
新しいアルバム「アスール」から悩める周の眠れぬ夜の歌…
「どれだけ待てば」
いつも不安で
いつまでも明日のことが気になり 焦燥の日々を重ね…
心の闇の向こうに
きっとあるはずの …いや ないかも知れない光を求め
走り続ける周の叫び
誰もがわかったふりをしているが
誰にもわからない未知なる明日には
後になって笑える日が きっと来る…
曲が終わり…メンバーが去った後も…
残り火を名残惜しいかのように大輔とMarがいつまでも発音している
そうか!
そうだった!
…このライヴの冒頭にふたりはこの曲のエンディングを予言していたのだ!
Marが消えていったが…音は残り…大輔も消えたが…
音だけがループしてフェイド・アウトしていく
誰もいなくなったステージに向かって
客席からは拍手が第一部の終了を惜しんでいるかのように沸き起こる
休憩をはさんで ハンド・パーカッションのよしうらけんじのソロが弾ける
たった独り…打楽器だけでオーディエンスを唸らせる妙技
自らの音に反応し 間と間を潜り抜け 次なる音に呼応する打音が
自ずとテンションを高め…聞いている人々まで巻き込んでいく
第二部はそのまま新曲の「夢の中のボニータ、黒い犬のペリータ」へ突入する
ioraとはすっかり長いつきあいになったパーカッショニストNona*が叩き出すリズムに
よしうらけんじが絶妙なタイミングで掛け合ってくる…!
この新曲はすでに数年前 ライヴでは歌われていた
当時のBBSにはこの曲に対する共感が数多く寄せられていたのを思い起こす
夢の中の憧れと 現実の憂鬱…
足元にまとわりついてくる飼い犬に向かって
慰めてくれるのはお前だけだと思ったところで
犬がねだるのはエサだけなのだ…
白と黒のパグを飼うioraらしいケッサクな歌…!
時に悩ましく…時に哲学的に見える犬たちに向かって
…人生ってなんだろう…と、問うたところで
難しい答えはいらないよ…と、吠えられる
賑やかに桃のカウントで始まる「鳥の国、亀の国」
ついにJZで共演できた東京フィルの第二ヴァイオリン首席の戸上眞里が
ジプシー風のヴァイオリンを美しくも豊かな音色を奏でる
彼女とは昨年のイヴェントで知り合い すでに前作「ブランコ」のアルバムで初参加
そして今年は二度もCafé杏奴(あんぬ)で大輔を交え4人のライヴを行った
クラシックのオーケストラで活躍する演奏家が
まさかのキャラバン仲間になるとは…!
しかし、慎ましやかに見える眞里さんの演奏にはクラシックだけに収まらない
ジャンルを超えた熱情が見え隠れする
この曲ではいつもエンディングがちょっと芝居がかって愉快だ
CDでもフェイドアウトしていくが…ライヴでもデクレッシェンドして…
ネジのきれた自動人形のように演奏はストップする…
ふつうなら そこからまた盛り上がるのだが…
今回の沈黙は長い…
たった独り…ベースのMarだけがとぼけた表情で動き回って悪戯する…!
初日はギターのマーガリン平田の帽子をギター・ネックにかけただけだったが…
翌日は隠し持っていた玩具の吹くと伸びる笛を桃にくわえさせ
ちっちゃなデンデン太鼓をよしうらけんじに持たせた…!!!
ベースマンの音でメンバーは生き返り…再度エンディングを盛り上げた
さらに今回のアルバムでも「蒼き街ジョドプール」で眞里さんは
フラメンコ・ギターと一緒に彩りを添えている
クラシック畑にありながら ヘッド・アレンジする才能も見事だ
これも最近のライヴでは 周の解説つきで聞くようになったいい曲だ
その昔…インドのマハラジャが壁の色を青で統一させたという美しい街…ジョドプール
さぁ 桃がフルートを構えた…!
前回の「ありったけ第二章」以来…ライヴでしかやんないぞ!…というあの曲
「ブランコブランカ」だ!
桃のフルートに大輔が何やら呟くようにからんでくる…
アドリヴ・バトルでもあるこの曲は
ジャズ歌手・伊藤大輔の破天荒ぶりが毎回笑わせて(?)くれる!
デタラメな意味不明のどこでもない外国語が飛び出すかと思えば
グランドピアノの下にもぐって潜り抜け ひょっこり絵の前に立っていたりと
まったくの予測不能なハプニングの連続…!
しかも驚くことに そんな奇行の最中もずっと歌い続けているのだ!
そして大輔の宇宙人ぶりにも負けない演奏を引き受けるのは
ベースのジミヘン…テクニシャンだからこそできるハチャメチャなアドリヴ
よくフリー・ミュージックをただデタラメにやってるだけと思う人もいるが
めちゃくちゃぐらい難しいことはないのだ!
壊れミュージシャンたちに負けはしないのが船長の桃!
大輔にフルートを持たせると…もう!…彼女の独壇場!!
♪takete takete takete ta ♪
…と、インドのタブラをアドリヴしていくうちに
どんどんと速くなって 手拍子も鮮やかに さらにさらに暴走へと向かう!
♪TIN TIN TA TIN TIN TIN TA TINN!!♪
もはや誰も止めることができない桃の絶叫ソングは
客席にまでも入り込んでいく!
これこそライヴ! これでこそiora The Caravanの醍醐味!
今…この時にしかありえない…ありったけのすべてをここに!!
神田サオリの絵は見事に咲き誇った大きな花たちを讃え
単に青のイメージに止まらない百花繚乱の世界を繰り広げていく
彼女の絵のイメージにのってiora The Caravanは初のインストゥルメンタル曲
「酔龍」を演奏する…
絵がサウンドになり…
音楽は絵になる…
ステージを覆うかのような巨大な龍が描かれ
それも初日には赤い龍…翌日には白い龍が立ち現れる!
ioraにとっては長年歌ってきた桃の力作「ライジング・サン」を
その名のとおり太陽の巫女のように賛歌する!
これほど長きにわたって張り上げる彼女の声量のすごさには
本当に舌を巻く思いがする
しかもこの曲は特に ただならぬ音の跳躍があって
並みの歌い方ではとてもじゃないが歌いきれない
それをあえて楽しんで歌うために作り、うたうのだから、脱帽…である!
そしてioraにとっては彼ら自身の体験から生まれたあの「星空のキャラバン」
池袋の公園で歌っては終電に飛び乗っていたころ
ついに終電に乗り遅れてしまった
しようがない…歩くか…と、下落合まで歩きながら
忘れていたものをしっかりとつかんだとき
天からご褒美にこの愛すべき歌は生まれたのだ
挫折しなければ 新しい自分は発見できない
発想を変えれば つらいことも楽しいものに生まれ変わる
この歌をお茶の水のライヴハウスで初めて聞いた時
…やったなぁ!…と僕まで嬉しくなった
この曲のCD録音からピアノの兄貴・大山あつおが登場
彼はキャラバンの中では最も古く
ioraがokuraだったころのお客で…アンコール!と叫んでいた男だった
あっという間に「ありったけのひととき第三章」は最後の曲を迎える
Tahnya(ターニャ)というioraとは仲のいいユニットのギタリスト
マーガリンこと平田崇が作ったコード・ワークにioraが作詞作曲したあの曲
「歩き疲れて眠りたい」
♪…もっと自由に くだらないアイデアも全部
信じて抱きしめていいんだろう
想いを歌にしたいなら 歌ってしまえばいいんだよ♪
誰かに向かって叫ぶ周の歌は いつも自分への応援歌だ
怖がりで泣き虫だった彼を励ましてきたのは 音楽なのだ
(さらに つづく…)
【2009/09/20 19:00】 未分類 |
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